「健康診断で甲状腺ホルモンが高いと言われたが、特に症状はない」「出産後に動悸がするようになったが、首の痛みはない」
このような場合、無痛性甲状腺炎の可能性があります。無痛性甲状腺炎は、首の痛みや発熱を伴わずに、甲状腺ホルモンが一時的に高くなる病気です。症状が軽い、あるいはほとんどないことも多く見過ごされがちですが、バセドウ病とは原因や治療方針が異なるため、正確な診断が重要です。
無痛性甲状腺炎

「健康診断で甲状腺ホルモンが高いと言われたが、特に症状はない」「出産後に動悸がするようになったが、首の痛みはない」
このような場合、無痛性甲状腺炎の可能性があります。無痛性甲状腺炎は、首の痛みや発熱を伴わずに、甲状腺ホルモンが一時的に高くなる病気です。症状が軽い、あるいはほとんどないことも多く見過ごされがちですが、バセドウ病とは原因や治療方針が異なるため、正確な診断が重要です。
無痛性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が起こる疾患の一つで、圧痛(押したときの痛み)がないことが特徴です。亜急性甲状腺炎(ウイルス感染後に起こりやすく、痛みを伴う)とは異なり、多くは自己免疫(橋本病の体質)に関連した炎症として発症します。
無痛性甲状腺炎では、炎症によって甲状腺の細胞が障害され、甲状腺内に貯蔵されていたホルモンが血液中に漏れ出す(流出する)ことで、血中の甲状腺ホルモンが一時的に高くなります。これは、バセドウ病のように「ホルモンを作り過ぎている状態」ではない点が重要です。
無痛性甲状腺炎は、多くの場合一過性で、時間の経過とともに自然に回復します。典型的な経過は以下の通りです。
中毒症期(数週間〜1〜2か月程度)
甲状腺ホルモンが高くなり、TSHが低下します
一時的な正常化
ホルモン値がいったん落ち着きます
機能低下期(数週間〜数か月)
甲状腺ホルモンが不足し、TSHが上昇することがあります
回復期
甲状腺機能が正常に戻ります
※全経過は3〜6か月程度が目安ですが、個人差があります。
※一部の方では、その後も甲状腺機能低下症が残ることがあります。
「無痛性」という名称の通り、痛みはありませんが、甲状腺ホルモンの変動に伴う症状がみられることがあります。
症状は比較的軽いことが多く、更年期障害やストレス、産後の体調変化と区別がつきにくいことがあります。
無痛性甲状腺炎の中でも、出産後に発症するものを産後甲状腺炎と呼びます。妊娠中は免疫機能が抑えられていますが、出産後に元の状態へ戻る過程で免疫のバランスが変化し、甲状腺炎を起こすことがあります。
産後数か月で中毒症期、その後に機能低下期を経て回復する経過をとることが多く、育児による疲労や睡眠不足と重なって見過ごされやすい点が特徴です。多くの場合、適切な対応により母乳育児を継続することは可能です。
「甲状腺ホルモンが高い=必ずバセドウ病」というわけではありません。無痛性甲状腺炎では、バセドウ病との鑑別が特に重要です。
血液検査
FT4・FT3(高値)、TSH(低値)
抗TPO抗体・抗Tg抗体(陽性のことが多い)
TRAb(通常は陰性)
甲状腺エコー(超音波)検査
内部の不均一、低エコー域
血流は増加せず、低下傾向を示すことがあります
甲状腺シンチグラフィ(必要に応じて)
放射性ヨードの取り込み低下を確認します
※妊娠中・授乳中は原則行いません
無痛性甲状腺炎は一過性の病気であるため、治療の基本は経過観察と対症療法です。
定期的な血液検査による経過観察が重要です。
無理をせず休養をとる
中毒症期は心臓に負担がかかりやすいため、激しい運動は控えましょう
ストレスをためない
自己免疫が関与するため、過労や強いストレスは避けることが望ましいです
自己判断で治療を中断しない
処方薬がある場合は、医師の指示に従ってください
無痛性甲状腺炎は、炎症によって甲状腺内のホルモンが一時的に血中へ流出する病気です。一方、バセドウ病は自己免疫によりホルモンを作り過ぎる病気です。原因が異なるため、治療法も異なります。
多くは数か月(3〜6か月程度)で自然に回復します。ただし経過中に一時的な機能低下期を経るため、定期的な検査が必要です。
多くの場合、特別な治療は不要で経過観察が中心です。動悸などの症状が強い場合は、症状を和らげる治療を行います。
再発することはあります。回復後も、必要に応じて定期的なフォローを行います。
多くの場合、母乳育児は可能です。使用する薬剤については、授乳状況を考慮して個別に判断します。
無痛性甲状腺炎は、痛みがないため見過ごされやすい病気ですが、甲状腺ホルモンの変動により全身に影響を及ぼすことがあります。健診で異常を指摘された場合や、産後に体調の変化を感じた場合は、放置せず甲状腺専門医による評価を受けることが大切です。
当クリニックでは、無痛性甲状腺炎に対して専門的な診断と治療、継続的なフォローを行っています。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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